ηなのに夢のよう

ηなのに夢のよう

読了。いやー、こりゃ反則だろ、と思いつつも、もう読み終わってから何回読み終わったことか。あー、またこうして次の森作品まで指折り数えちゃうんだよね。


以下、ネタバレにつき反転。


今回は、事件としては全くもって手抜きというか、そもそも被害者(自殺だったけど)のプロフィールも全くわからないわけで、推理させる気すらねーのかと。しかしながら、その探偵役が紅子さんだった時点でもう敗北です。ああ、こりゃわくわくして読むしかないじゃないか。


さて、事件はあっという間に解決してしまったわけですが、色々と今回は物語の転換点を迎えた感じに。何より驚かされたのは、「すべてはFになる」の伏線がまだそんな形で残っていたのか、ということ。萌絵の両親の死について−言われてみれば、読者である自分もそれについて疑問を持たずにスルーしていたような気がする。

ただ・・・・・・、たった一つだけ、小さな可能性を、西之園は思いついた。
「え? もしかして・・・・・・」彼女は片手をゆっくりと口に当てようとしていた。自分のそのモーションがスローモーションで自覚された。
「もう何年になる?」金子はきいた。
その問いで、西之園の躰は微動する。
「飛行機事故のこと?」自分の口から出た乾いた言葉。
「ああ」金子は視線を逸らさず、頷いた。


このくだりで、こちらまで寒くなってしまった。萌絵が興味本位で事件に携わってきたことの回答と、そこから紡がれる未来がようやくちゃんと見えたような気がする。まあ、λの時にも感じたことだけど、より鮮明に。

しかし、金子くんはますます男っぷりを上げてるよなー。森作品には珍しいタイプの男キャラだと思う。


そして、久々に登場の紅子さん。反応が早いと評されたその思考は全く衰えてないどころか、シャープになってるような気がする。でも、犀川の指向性は、実は父親譲りなのかなーと今作を見て感じたりも。
しかし、何より驚いたのが、ここで登場してきた久慈博士。ということは、やはり今回の実験とウォーカロンの開発が結びついていくのだろうか。でも、ちょっとそれにしては安直すぎかなあ。


最後のエピローグ、ファンなら涙モノの結末だったけど、単純に作品の〆として考えた場合に、死に対して萌絵の感情が一つ整理されたというのがあのエピソードでよりくっきりと描かれてて、森先生の上手さを妙に実感してしまった。個人的には、森作品は年代を追うごとに鋭く、そして余韻が残るような気がしていて、やっぱりやめられないのです。。。


今回本編(?)の影が薄いけど、新キャラの雨宮ちゃんはかなりいい味してると思う。美人で名古屋弁というと、どうしてもラブちゃんと重なるけど、二人が両方でてきた今回の作品では意外とそれを感じさせなかったような気がする。よさゆきの時に急にお嬢様口調になるのが笑えたなあ。

「悩みがあったら、国枝先生に相談するといいよ」山吹は言った。
「ああ、それは速攻で効き目ありそうですね。先生、私、死にたくなっちゃったんですけど・・・・・・」加部谷はそこで声を低くする。

「死ねば」

今回のツボな会話はコレ。加部谷、面白いなあ。自爆していくサマがたまりません。山吹くんが微妙にいじめてしまう気持ちがよくわかる。


さて、あと今回の大きな要素としては、赤柳の正体かなあ、やはり。保呂草さんが久々に出てきて、ついに二人が再会するシーンがあるわけですが、結局誰なんだろうなあ。
mixiなどでも論議されてたんだけど、素直に推理すると「夢・出逢い・魔性」で出てきた稲沢さんになるのかなーと。でも、意外と森川素直の線も捨てがたいんだよな。あと、見かけたすごい説がコレ。

私は、赤柳=紫子説に一票いれたいと思います。
理由は、紫子さんと赤柳さんの名前に使われている母音がまったく同じだからです。
kAgUyAmA mUrAsAkIkO
   と
AkAyAnAgI hAtUrOU
子音は無視して見て下さい。
全く同じ子音が偶然使われるとは、少し考え難いです。

あともう一つ、τの中で、
赤柳さんが「忍者に憧れて」と言っていたことが気になりました。

これは考えも付かなかった。いやー、凄い。でも間違ってる気もするんだけど。まあ、ちゃんと正体分かるのは少し先だろうな。