久々の藍坊主

フォレストーン 初回限定盤(DVD付)

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藍坊主のアルバムとしては2年ぶりになるのかな?


彼らのアルバムとしては、リアルタイムで購入した初めてのアルバム。
実は、ここに収録されているシングル郡から、ようやくリアルタイムに聞き始めたという感じなので、今までのアルバムのようにすべてが新鮮、というわけにはいかないというのが正直なところ。


一聴すると、今までのように初聴の時点で心わしづかみな超強力ナンバーというのがないこともあり、なんだかもやっとした感じになるけれど、何度かまわしてみると、前作の「ハナミドリ」にも通じる温かさに溢れた丁寧なアルバム。
今までのアルバムにも言えることだけど、アルバムの曲順とかがとても気持ちいい。


ただ、ぱっと聴いて分かりづらいというのは、詞の世界の分かりにくさと同義でもある。
今までよりも深くなったという意見も多くみられるけど、個人的には、哲学として謳っているものを、いかにパーソナルな世界に落としこめるかのが音楽にライムを載せる上で重要な気がするんだけどな。
そういったミクロな部分で大きなものを語れるのが藍坊主の良さだと思っていたので、そういったぐっと来る部分が少なくなったことに一抹の淋しさも感じます。


久々の日記なので、曲毎にレビューしてみちゃってもいいすか?w

1.Esto
藍坊主の場合、アルバム1曲目には名曲が常に入っているような気がする。
特に、メジャー2枚目の「ソーダ」の1曲目に収録されている「雨の強い日に」は、せつなさ全開の藍坊主節が唸る名作で、今回の「Esto」はそこまでのインパクトはないものの、このアルバムをどこか象徴しているような良曲。

歌詞を読むと一瞬ぎょっとするが、メロディーに乗ると意外にも軽くて気持ちいい。
アコギの音が爽やかかつ切なくて、つい口ずさみたくなるようなナンバー。
「鳥が飛び、青が空を突き抜け、くすんだジョウロの向こうで、スズランが揺れる。」なんて描写が挿入されるのがとても彼ららしい。


2.ハローグッバイ
メジャー4枚目となるシングル。
藍坊主に嵌まりだしてた時期にリアルタイムで初めて聴けた曲で、これを期に藍坊主の歌が好きになったこともあって、思い入れのある曲。
hozzyの詞についても、身近な世界との対比が分かりやすくて、個人的にもすごく好きな曲。

もっとも、アルバム用のミックスは、ちょっと好みと違うんだよなあ。ドラムの音はかっこよくて好きですが。
リーダーの藤森さんのメロディーメイキングの良さは異常。初藍坊主な方にもとってもお勧めのナンバー。

3.コイントス
メジャー5枚目となるシングル。
ベースのうねりやドラムのアグレッシブさがちょっぴりクセになるナンバーで、アルバムのこの位置に来てなんとなく存在感を増した気も。
「心をまわし続けよう まわすんだ」というブリッジの部分の音がとても好き。

4.ピースサイン
他のバンドのアルバムの曲に入っていそうな、少し箸休め的なニオイのするミディアムナンバー。
このアルバムの曲の中では歌詞がとても分かりやすい部類で、よく読むと新芽だとか太陽だとかっていう、このアルバムとリンクする歌詞に。

5.僕は狂ってなどいない
この題名の時点で、ドン引く人もいるんじゃないかと思ったり。
ボーカルのhozzyならではのイグノフォン(造語)満載のつくりで、ただ曲自体はイントロの不協和音とかを除けば、結構分かりやすい。
サビなんか普通にかっこいいしね。ただ、何度か読み直してもこの歌詞の良さはぶっちゃけよく分からなかったりw(意味はわかるけど)

6.空を作りたくなかった
ファンの間でもかなり賛否の分かれたメジャー6枚目シングル。
こう流れの中で聞いて、かなりこの曲自体聞きやすくなったんじゃないかと思う。
サビの失踪感、イントロの浮遊感とか、何気に結構凝りまくってて、出た当初の感想と変わってきて、結構好きなナンバーになってきました。
ここから後に出たシングルの「言葉の森」なんかにつながる流れがあるからこそ、この曲の立ち位置には意味があるんじゃないだろうか。

7.羽化の月(FORESTONE Ver.)
ハローグッバイのカップリングに入っていたナンバーをリメイク。
音色がとても豊かになって、ちょっぴり抱いていた印象から異なったような気がする。
個人的には、もともとのプログレっぽいニオイのするアレンジのほうが好み。
歌詞を見るととても不思議だけど、メロディーとの相性がとてもよくて、なんとなく曲を通じて世界観がちゃんと伝わる仕組みに。

8.不滅の太陽
前のナンバーに引き続いてのhozzy作で、歌詞の世界もちょっぴり不思議な世界観を継続。
ただ、サビの出だしの美しさは、優しさと力強さに溢れてて、すげー好きなんです。
音の使い方も、ちょっとブルージーなロックと童謡的世界観の対比が面白くて、ちょっとクセになるナンバー。

9.深く潜れ
その名の通り、インナー世界へと迷い込むような音色と詞で構成された、アグレッシブなナンバー。
ロディアスかつスリリングな展開が耳について、おそらくこのアルバムをある意味で象徴する曲になるのかなーと思う。
サビのファルセットの使い方がよければ、多分すげー名曲だったんだと思うんですが・・・個人的にはそこがちょっぴり残念。*1

10.言葉の森
これがもしアルバムにヒッソリと収められてたら、多分腰を抜かして絶賛するんじゃないだろーか、というアルバムのリードシングル。
久々に藍坊主らしいガツンと来るメロディーもさることながら、ブリッジ部分の音使いのかっこよさ、「必要なんだ 言葉だって 必要なんだ きみもここに」という小さな世界での肯定とかも含め、このアルバムのコンセプトと、今までの藍坊主らしさをうまく繋いでくれた曲なのかも。
hozzyの声が、不思議と昔のアルバムのようなちょっとざらついた声になっているのが、逆にうまくはまってる気がする。

11.アジサイ
アルバム最後は大体ピースフルなナンバーが納められてるけれど、このアジサイ、何気にクセになります。
サビのメロディーラインがとっても素敵で、何気にこのアルバム全体をぴりっと締めてるような気が。
この曲のせいか、フォレストーンというアルバム全体が初夏のニオイがするんだよなー。



というわけで、調子ぶっこいて書いてたらすげー長くなってしまった・・・。すごくいいアルバムなんだけど、藍坊主じゃなきゃ出てこないようなフレーズが出てこないのが個人的には少し淋しくなりました。

たとえば、2枚目のアルバム「ソーダ」の中にある「瞼の裏には」という曲がありまして。歌詞自体は振られる男の歌、なんですが、ブリッジの後のアコースティックなサビの部分でこんなフレーズが出てくるんです。

たとえそれが本心じゃなくても君に冷たくできないよ
悲しませなければつかめない喜びもあったのになぁ

さらっと歌われてるけど、とても意味深なフレーズで、ふと聞き流しててもいつも耳に残るこのフレーズ。
平易な言葉だけれど、相手から向けられた悲しさだって、時には自分にとっては喜びになるっていうのは、実はとても大人の感情ではないだろうか。
自分が藍坊主に期待するのは、そんな何でもないようで、ぐっと胸掴まれちゃうような歌なんだけどなあ。


哲学と音楽は似通っているという彼らの言葉もよく分かるけれど、個人的には、音楽でそれをやる意味が本当にあるのかなーという気もちょっとするんです。
難しいことを難しいように説明しても、それは分かったことにはならない。
もしそこに流れる哲学を伝えたいならば、それを平易な言葉だったり、ミクロな言葉に置き換えられて、初めて意味のあることなんじゃないかと思うんすよね。


ただ、藍坊主らしいフレージングの良さとか、メロディーのわしづかみ具合は相変わらずで、その点では相変わらず聞きやすく、とてもいいアルバムなんだけど。
過渡期だとも思うので、このさらにもう次のステップがとても楽しみになりました。

*1:ジムノペディックみたいな使い方はすごく好きなんすけどね