グラスホッパー読了

グラスホッパー (角川文庫)

グラスホッパー (角川文庫)

久々の伊坂作品。彼の作品は、初期の作品中心に読んでます。今度はチルドレンを読む予定。


自分が彼の作品と最初に出会ったのは、「重力ピエロ」でした。饒舌な語り口と、映画などの引用を織り交ぜながらも、軽いタッチの言葉がだんだんと核心を突いていく展開と、何より出てくるキャラクターの味がすごく好きで一気に好きになりました。
が、その後の作品はどうもこれを越えてくれなくて(ギャングシリーズは読んでて楽しいから好きですが)、今回の作品も自分の中では重力ピエロを越えるほどではなかったのが残念。


3人の主人公の視点で交互に話が進んでいくわけなんだけど、うまいなと思ったのは、中心にいるのは3人の主人公というよりは、押し屋と言われるある人物。
彼を巡り、二転三転していく話は、一気に読ませるだけの求心力があって面白かったのは確か。


ただ、ハードボイルドといえば聞こえはいいんだけど、どうにも人物の扱いが最後まで好きになれなかったというか。特に鈴木というキャラクターがあっさり描かれすぎてるせいか、どうも入り込めなかった。彼の視点に読者は一番近いはずなのに。
あと、「劇団」については逆に情報を出しすぎなのかなとも。展開がうっすら見えてしまって、ちょっと醒めてしまった感もあった。


と、少し辛めに書いてきたんだけど、実際文章がうまい人だなという印象は変わらず。キャラクター造詣についても、蝉なんていいキャラしてるよね。
このまま他の作品も読んでいって、本屋大賞の作品までなんとか読んでいければいいなあ。